<パリ8区のエルメス本店 馬の飾り物が…もともとは馬具屋というから…>
最終回の今回は、H5年11月5日(金)から18日(金)までの15日間各国を研修で回った中からの番外ともいうべき、日本と欧州各国との文化・習慣の違いを、いくつか紹介いたします。なお、当時、欧州各国はさらなる統一に向けた最中で、EC(欧州共同体)からEU(欧州連盟)への過渡期でした。
☆車社会の違い
前回のパリ編で道路が車優先(に近い)であることを取り上げましたが、実は車についても考え方に、大きな違いがあるようす。パリのコンコルド広場の中央に立つオベリスク(エジプトの神殿から運んできた尖塔)を見学した際のことでした。私たちが大型バスで、駐車場に入った途端に、「ガッシャ~ン」という大きな衝突音が聞こえてきました。窓から見ると、縦列駐車中の老夫婦が乗ったルノー車が、前後にと、バンパーをぶつけて、隙間を広げて、悠々と走り去っていきました。ガイド氏によると、バンパーはそのためについているもので、衝撃吸収材なんだ、そうです。これには唖然…
凱旋門近くのコンコルド広場中央に立つ「オベリスク」。尖塔の表面に彫られた絵はエジプト古代文字のヒエログリフ。クレオパトラの時代の絵文字です。従来解読不能でしたが、シャンポリオンがロゼッタストーンを発掘して、解読が可能になりました。
もう一つ、ドイツのアウトバーン(高速道)を走行しているときでした。周知のようにアウトバーンは速度上限がありません(制限区域もある)。150、160㎞で走行するのは普通で、逆に最低速度が60㎞と決められている区間もあります。ただし、トラックやバスは最高速度が決められています。
速度の話は、どうでもいいことで、猛烈なスピードで、我々のバスを追い抜いた赤いベンツの屋根を見ると、鳥の糞だらけ。また対向車線を見ると、高級車と思われる車のスモールランプが壊れ、いまにも取れ落ちそうだったり…。要は、日本では高級車はステータスの一部で、ピカピカに磨き抜かれていますが、ヨーロッパでは、車は、あくまでも移動や運送の手段なんですね。
それに欧州のほとんどの国では、車検制度がありませんから、故障による事故は、あくまでも自己責任になります。
☆パリの地下鉄事情
パリ市内の移動は何と言っても地下鉄METROが便利。市内を縦横に走り、改札を出ない限り何度乗り換えても料金は均一で、6.5フラン(約120円ほど)。10枚綴り(=カルネ)だと39フラン(約790円)。使用期限がない。なお、現在は通貨単位がユーローなので、詳細は不明ですが…。
ホームに入るときは、日本と同じで自動改札機に切符を入れて通りますが、出るときはノーチェックで、競馬のゲート状の扉の前のステップに体重をかけると、自動的に扉が開きます。乗車中の検札がないので、入場と同時に、切符をポイ捨てする人がほとんど。
無賃乗車も多いようです。足の長い青年が、改札機を股いで、悠々と去ってしまったり、出口の改札機の下から、長い脚を突き出して、ステップに足をかけ扉を開けて、逆入場したり、いやはやルール無視がはなはだしい。
地下鉄車両のドアは、日本のように自動開閉ではない。降りる人がいないと、自分で開けない限り、ドアは開かない。なお閉めるのは自動で閉まります。
改札口でのある出来事。研修で一緒になった同僚O氏と、地下鉄に乗った時の事でした。私が改札機を抜けた時に、後ろのO氏が、突然「ぎぇ~!」。ふりむくと、たすき掛けにしていたO氏のバッグが…、扉に挟まれ、体ごと後方に引きずられて、首を絞められている。ショルダーバッグが邪魔して、引いても扉が動かない。「おお、Oさん、ここで、一巻の終わりか、Oh, My God!」と思った途端、改札機が開いた。後ろから来たフランス人が、切符を投入したのだ。O氏の一言「ああ助かった」。にやにや笑うフランス人に、私が「Merci、 Merci」と何度も礼を言いました。O氏、どうやらポケットにしまい込んだ使用済み乗車券を、未使用と勘違いして投入したのが原因らしい。
無事Passy駅に到着。地下鉄乗車中の出来事。突然車内で、笛とギターの軽快な演奏が始まる。しばらくして仲間の一人が財布らしき入れ物を持って乗客の間を回りお金を求め歩く。フランス人は、見ないふりをしている。
ホームに降りると、乗り換え地下道のあちこちで、バッジ売りや写真売りが商売をしている。私とO氏が乗り換えのため連絡通路を進んでいると、突然「さくら~、さくら~♪」の演奏が鳴り響く。琴の音色をまねているようだ。一見して我々を日本人だと見抜いた眼力に脱帽。つい10FR硬貨を渡してしまった。
☆美術館巡り
世界の3大美術館の一つと言われる「ルーブル美術館」に行く予定が…。突然ミッテラン大統領のルーブル美術館視察が決まり、当日は閉館となってしまった。たとえ入館不可得でも美術館の外観や様子だけでも見たいという希望で、早朝行くことに。
正面入り口の前庭にあるピラミッド型の明り取り構築物はよく見かけますね。とにかく寒い朝で、研修生全員の集合写真を撮って終わり。なので同僚のO氏と二人、個人的に「ロダン美術館」に行きました。ところが、入館待ちの客の多いこと。ルーブルが入館不可なので、こちらに回って来た観光客が多いいいためらしい。とくに、警備員のチェックが厳しく、入館までにはかなり時間がかかるらしい。庭園だけ見学できるコースがあって、4FR(約75円)とのこと。庭園だけまわってきました。
彫刻は屋外に結構展示されています。この池は全面結氷、係員が氷のかけらを、カーリングのように飛ばしていました。なお、当時はカーリングなる言葉は、ありませんでした。
ロダンの「考える人」屋外展示だったことを初めて知りました。
さらにもう1カ所、モネの画像が収集されている「オランジェリー美術館」へ、この美術館は、コンコルド広場の一角にあって、睡蓮で有名なモネをはじめ、アンリ・ルソー、ルノワール、マチス、マリー・ローランサンなど有名な画家の作品が所蔵されています。
モネの「睡蓮」の部屋に来てびっくり。「睡蓮」は単作の絵画とばかり思い込んでいましたが、部屋一面、360度が睡蓮の絵です。なおモネの睡蓮は、何作もあって、世界中の美術館が所蔵していますが、パリのここオランジェリー美術館が最大とのことです。
これもこの美術館に展示されているアンリ・ルソーの「ジェニエ爺さんの二輪馬車」です。
モネの「Argenteui=アルジャントゥイユ」題名の意味はよく解りません…、地名なのか?
ルノワールの絵ですが、右側は「ピアノに向かうイヴォンヌとクリスティーヌ・ルローヌ」という題名でした。このほかにも有名な絵がたくさん展示されていますが、機会があれば照会します。
☆最後にパリ市内の大型店に入った時のことを…
ウィンドウショッピングで疲れ、同僚のO氏と喫茶店に入った時のこと。如何せんメニューがすべてフランス語、読めたののは、サンドウィッチとコカ・コーラの二品だけ。さっそく注文。カウンターの奥で、オヤジが7-80cmもあるひょろ長いフランスパンを持っている。ああ先客の注文を…と思っていたら、なんと出てきたのは、フランスパンに切れ目を入れてハムとチーズを挟んだもの。日本で言うサンドウィッチとは全く違う。
入れ歯のO氏は、この硬いフランスパンがかじれず、わたしが食べる羽目に。
とにもかくにも、15日間にわたる研修は無事終了しました。なお、ここで照会した事項は、ヨーロッパが変革期にあったこと、また独断あるいは偏見が含まれている可能性もあることを、お断りしておきます。
コロナウィルスで、世間が騒然としている中、皆様方も十分留意されて罹患なきようご留意ください。